相続した土地は放棄できる? 押さえておきたいポイントや放棄の流れも解説
土地を相続したものの「相続放棄をしたい」「活用方法が分からない」と、悩んでいらっしゃいませんか。活用するにしても相続放棄をするにしても、国の定める手順に従って手続きしなければなりません。本記事では、土地を相続した際に押さえたいポイントや相続放棄をする場合の流れと注意点、相続放棄以外の活用方法について解説します。
相続した土地はどうする?
土地を相続した場合、そのままにしていても固定資産税が発生します。不利益を被らないためにも、なんとかしたいと思うことでしょう。
土地を相続すると、相続した土地を持ち続けることにした場合と、相続放棄をするパターンを選ばなければなりません。それぞれのパターンについて見ていきましょう。
活用する
相続した土地を持ち続けることにしたなら、活用方法を考える必要があります。土地だけを相続した場合、駐車場経営・トランクルームの設営・コインランドリーの設営・太陽光発電などの活用方法が考えられるでしょう。特に、駐車場経営は、オーナーの負担が少なく始めやすいですし、将来的に土地を売ることにした場合でも解体する必要はありません。そのため人気の活用方法です。
一方で、建物付きの土地を相続したなら、売却したり、リノベーションして賃貸経営したりできます。シェアハウスやカフェ経営などの活用方法も人気です。しかし、賃貸経営をするのであれば、十分なノウハウや知識が必要なため、難易度が高いといえます。
相続放棄する
土地を相続するとなると相続税が掛かり、その後も固定資産税や維持費が発生します。さらに、相続した土地によっては売却も活用もできないこともありえます。相続した土地を「相続放棄をしたい」と、希望する人も少なくありません。
特に、被相続人に大きな負債があることが分かっている際は、相続放棄をした方がよいでしょう。しかし、相続放棄をした場合は、土地だけでなくそのほかの財産や貴重品なども相続できなくなることを理解する必要があります。
土地を相続した際に押さえておきたいポイント
土地を相続した場合は、相続するにしても、放棄するにしても以下のようなポイントを押さえつつ手続きや管理を行いましょう。
- 相続登記を必ず行う
- 固定資産税や管理費用が掛かる
- 放棄する場合は3か月以内に
相続登記を必ず行う
土地を相続することにした場合は、相続登記を必ず行わなければなりません。相続登記とは、亡くなった人の名義から、相続した人の名義へと変更するための手続きです。2024年4月1日より、相続登記が義務化に。これから土地を相続する予定の人も、すでに相続した後で相続登記が済んでいない方も手続きが必要です(参照:東京法務局)。
また、登録手続きは、相続後3年以内に済ませる必要があります。登録を放棄した場合は、10万円以下のペナルティの対象となりますので、必ず行いましょう。
固定資産税や管理費用が掛かる
土地や、建物付きの土地を相続した場合は、固定資産税や管理費用が必要です。家賃収入や、駐車場収入など、土地からの収入がなくても固定資産税が掛かります。さらに建物がなく土地だけの場合は、固定資産税額が高くなります。
また、相続した建物や土地は、管理義務が生じ、そのための費用も掛かることを覚えておきましょう。例えば、光熱費、修繕費用などが必要です。空き家管理サービスに管理を委託するのであれば、支払いが発生します。
放棄する場合は3か月以内に
相続放棄をすることに決定した場合、放棄のための手続きは3か月以内に行いましょう。具体的には、不動産を相続したことを知った日から、3か月以内に相続放棄に関する書類を家庭裁判所に提出するという意味です。家庭裁判所に書類を提出後、相続放棄が成立するまでの間に3か月が過ぎた場合でも焦る必要はありません。
また、被相続人が亡くなってしばらく経った後で、不動産を相続する可能性も考えられます。例えば「生前ほとんど面識がなかった人の土地を、いきなり相続した」「ほとんどの親族が相続放棄をしたので自分に回ってきた」などの状況があるでしょう。その際は、相続したことについて知らされたメールや手紙などをもとに「相続したことを知った日付」の証明ができます。
土地の相続放棄の流れ
土地の相続放棄をすると決定したら、次のようなステップで手続きを行いましょう。
- 法定相続人の確認
- 相続財産の調査
- 相続放棄に掛かる費用・書類の準備
- 家庭裁判所に相続放棄申立て
- 照会書の返送
- 相続放棄申述受理通知書を受け取る
上記でも解説したとおり、相続したと知った日から3か月以内で行わなければなりません。必要な書類をそろえたり、調査をしたりする必要があるので、放棄するのであればできるだけ早く取りかかりましょう。
1.法定相続人の確認
法定相続人とは、被相続人の財産を相続する権利を持っている人のことです。法定相続人は民法によって定められています。法定相続人は、被相続人の配偶者と子どもなどの血族です。
相続する順位が決められていて、法的に結婚している配偶者は常に法的相続人になります。その後、第一順位「子どもと代襲相続人」第二順位「父母、祖父祖母などの直系相続人」第三順位「兄弟と代襲相続人」と続きます。
被相続人に遺言状がある場合でも、法的相続人は財産を一部相続することが可能です。土地に関する相続や相続破棄の手続きをする際も、法定相続人の確認を先に行いましょう。
2.相続財産の調査
次に、相続財産の調査をします。財産には、土地や建物などの不動産はもちろん、通帳の貯金、貴金属、骨董品、証券、自動車なども含みます。また、著作権、特許権なども含まれますのでしっかりと必要があるでしょう。
さらに、被相続人に借金がある場合は、相続した人が借金も負担しなければなりません。被相続人に負債がないかについては、特に慎重に調査しましょう。例えば「借金やローンはないか」「カードの支払いが滞っていないか」「連帯保証人になっていないか」などをチェックしてください。相続した方がマイナスになる場合は、相続放棄をした方がよいでしょう。
3.相続放棄に掛かる費用・書類の準備
相続放棄をすることに決めた場合は、手続きに必要な書類と手続きに掛かる費用を用意しましょう。手続きに必要な書類の一例は、次のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人と相続人の関係が証明される戸籍謄本
- 被相続人が死亡したことが分かる戸籍謄本
- 被相続人の住民票もしくは戸籍の附票
被相続人と相続人の間柄によって、用意する資料が異なるケースがありますので、事前に調べましょう。また、相続放棄申述書は家庭裁判所のホームページからダウンロードが可能です(参照:家庭裁判所のホームページ)。
また、手続きに必要な費用の一例を、下記にまとめました。
- 収入印紙代:800円
- 郵便切手代
- 戸籍謄本を取得するための代金
- 司法書士に手続きを頼んだ場合の費用:3万〜5万円
法的相続人を確認したり、戸籍謄本をそろえたりするのは、時間と労力が掛かります。そのため、手続きをプロに任せる人も少なくありません。司法書士に依頼した場合は、さらに3万〜5万円の費用が必要です。
4.家庭裁判所に相続放棄申し立て
書類をそろえ、相続放棄申述書に必要事項を書き込んだら家庭裁判所に申し立てを行います。申立て方法は、家庭裁判所に直接出向いて申立てをする方法と、郵送で送る方法の2つです。
郵送で送る場合、特にルールはありませんが、レターパックなど郵送した日付が残る方法を選びましょう。相続放棄ができる期限は、3か月以内と決まっているため、いつ郵送したのか日付を証明できるものを残しておく必要があるからです。
5.照会書の返送
相続放棄申述書を提出後、裁判所から照会書が送られてくることがあります。照会書とは家庭裁判所からの質問状のことです。例えば「死亡を知った経緯」「相続放棄をする理由」「自分の意思で相続放棄をするのか」などについての問い合わせがあるので、質問に答え送信しましょう。
なお、照会書の結果により相続放棄が却下された場合は、相続放棄の再申請はできません。
6.相続放棄申述受理通知書を受け取る
相続放棄申述書が受理されたら「相続放棄申述受理通知書」が届きます。届く目安は、数週間から1か月ほどです。届いた通知書は大切に保管しておきましょう。
また、銀行などに相続放棄をしたことを証明するためには「相続放棄申述受理証明書」が必要です。
「相続放棄申述受理通知書」に証明書の申請書が同封されています。必要であれば、申請してください。
2023年開始の「相続土地国庫帰属法」について
「全員が相続放棄をした場合、土地はどうなるの?」「土地だけ相続したくない」と考えることはありませんか。実は、2023年に「相続土地国庫帰属法」が開始し、誰も相続しない土地を国に返還することができるようになりました。本項目では、相続土地国庫帰属法について詳しく解説します。
相続土地国庫帰属法とは?
相続土地国庫帰属法とは、土地を相続した人が土地を所有したくない場合、所有権を国庫に帰属できる制度で、2023年4月27日に開始しました。
「相続した土地が遠くにあって管理できない」「相続放棄はしたくないけど、土地は相続したくない」などの理由がある人が、新しい制度によって土地を手放せるようになりました(参照:政府広報オンライン)。
相続した土地の活用方法に困っている人は特に、考慮できるでしょう。この制度によって、相続した土地が放置され、荒れた状態になるのを防げるメリットもあります。
相続土地国庫帰属法の対象となるための要件
相続土地国庫帰属法の申請ができる人と土地には、それぞれ次の条件があります。まず、申請ができる人は、相続や譲渡で土地を所有した人です。もともと土地を所有していた人や、自分で土地を買った人、法人は申請できません。共同で土地を相続した場合も、申請できますがそのときは、全員で申請します。制度が開始する前に相続した土地でも、申請が可能です。
申請できる土地の条件は、建物がないことです。また、管理や処分に多くの費用が必要とされる土地も申請できません。すでに利用が決まっている土地や、汚染されている土地も却下されます。政府広報オンラインには、具体的にどの土地が却下されるのかについての説明が載せられています(参照:政府広報オンライン)。
相続土地国庫帰属制度の負担金
相続土地国庫帰属制度を申請する際は、審査手数料と、土地の管理料を一部負担する必要があります。申請した際に、審査手数料として土地1筆(土地の個数を扱う単位)あたり1万4000円の支払いをします。
さらに、審査が承認された場合は管理料として1筆ごとに約20万円を負担しなければなりません。20万円は、あくまで基本の金額です。一言に土地と言っても、田畑、森林、宅地など種類が異なります。帰属する土地の種類や状況を考慮して金額が決まりますので、負担金の額も変わることを理解しておきましょう。
負担金は、納入告知書に記載されているので、その金額を、納品告知書を添えて日本銀行に納品します。都市銀行や、ゆうちょ銀行、信用金庫などでも支払いが可能です(参照:法務省)。
【建物もある場合の活用】は全てお任せの「フリーノベーション」がおすすめ
土地のみを相続し、要らない場合は相続土地国庫帰属制度を検討できます。しかし、建物がついている場合は、申請条件に当てはまりません。
「建物付きの土地だから、相続土地国庫帰属制度の対象にならない」「建物付きの土地を相続したけど使い道がない」と悩んでいる方は、フリーノベーションがおすすめです。
フリーノベーションとはオーナー様に変わって弊社が賃貸経営をするシステムです。オーナー様と、弊社との契約が成立した後、弊社が空き家をリノベーションし賃貸経営します。
空き家の立地条件や、間取り、状態などを考慮して、空き家の活用方法を考えます。今までに契約した空き家の活用方法の一例は、シェアハウス、民泊などです。古民家や長屋の良さを活かしたシェアハウスや、独身寮を女性専用シェアハウスに改装するなど、さまざまな形での賃貸経営実績があります。
リノベーションに掛かる費用も経営のための労力も、オーナー様は負担する必要がありません。経営に関するノウハウがない方でも、賃貸経営できる仕組なので、ぜひ活用してみてください。
相続放棄はポイントを押さえた準備が必要!建物がある場合は活用方法も考えよう
土地の相続放棄をする場合は、全ての財産の相続を放棄しなければならないことを理解しておかなければなりません。被相続人に借金がある場合は、相続放棄をするメリットが大きいでしょう。また、相続放棄に伴って、さまざまな書類をそろえて3か月以内に手続きする必要があります。必要であればプロに頼み、スムーズに処置できるように取り計らいましょう。
「土地だけ相続したくない」という方で、土地に建物がないケースでは、相続土地国庫帰属制度を検討するのも1つの方法です。しかし、建物があって、活用方法に困っている方も少なくありません。その場合は、売却したり、自分で賃貸経営をしたりすることもできるでしょう。
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