借地権付き建物も生まれ変わる! 1人時間を充実させるシェアハウス「KURAカフェ 中野新橋」誕生!

このサイトをご覧になっている方の中にも、借地権付き建物の活用でお困りの方も多いのではないでしょうか?

所有権の物件とは違って、月々の地代や契約満了時の更新料が負担となる借地権。1つの不動産に土地の権利と建物の権利が混在しているので、売却する際には土地所有者の承諾や名義変更手数料、建て替え承諾料などの高額な手数料がかかり、相続や放棄にも慎重な対応が求められます。

「建物を壊して土地を返す」「相続を放棄する」だけではなく、「貸す」という選択肢もあることを今回の記事で知っていただけたらと思います!

 

依頼の流れ・現地調

今回の物件は、オーナー様が賃貸物件として貸し出していた築58年の一軒家。
建物は綺麗に保たれているものの昔ながらの間取りや造りに入居者が長居せず、また新しい入居者が入る毎に修繕やリフォームを繰り返していることでコストパフォーマンスが悪い、というご相談を受けたことが始まりでした。
そして冒頭でも触れましたが、今回の物件は土地の所有者と建物の所有者が違う「借地権付き建物」でしたので、民泊ないしシェアハウスとしての再利用が可能か、どの程度のリノベーションが可能かといったところを契約書などで確認する必要がありました。
世の中の流れとしては、この「借地権」は減ってきていますが、相続された物件や長年の空き家など、古民家ではまだまだ多く残っており、弊社で扱う物件も借地権付き建物が多くを占めていますので、それだけ活用に悩んでいる方も多くいらっしゃるのだと感じています。
どのような契約になっているか、どのような活用可能性があるのか、まずは一度ご相談をいただければと思います。

 

状態確認

建物の状態としては、築年数ゆえのゆがみや柱の腐敗はありましたが、賃貸物件として貸し出していたこともあり、築58年でもきれいで、リフォーム箇所は少なく済むだろうと推測ができました。
「古民家」に明確な定義はありませんが、国の制定する文化財登録制度の元では築年数が50年以上のものが対象となっています。

そして、建物を壊さず活用することを視野に入れている方は、建物への愛着を強く持たれていることが多い印象を受けますが、今回のオーナー様も賃貸箇所とは別に個人スペースを残しており、その内部のきれいに陳列・ディスプレイされた本やコレクションの様子で、いかにこの家を大事にされているかが伝わってきました。
今回のリノベーションではそのスペースも合わせてお預けいただいたので、後の利用者だけでなくオーナー様にも喜んでもらえるプランニングをしよう、とより一層気合が入りました。

 

プランニング

古民家再生の観点からは、残せるものは残したい。
今回は天井や柱など古民家らしさが色濃く残る部分を多くを残せそうでしたので、必然的に「和」のテイストが強くなる=そのまま「古民家」を基本の柱にすることを決定しました。
また近年、川越、栃木、蔵前など「蔵の街」が注目を集めている流れもあり、蔵をリノベーションした「蔵カフェ」の要素も入れ、オリジナリティを出せないかと考えました。

 

用途はシェアハウスに

シェアハウスとしての使途の決定は、駅からの距離、そして「和氣会々 都立家政」の記事でも書いた用途地域によるものです。
民泊は利用者の大半が旅行者で、大きな荷物を抱えていたり観光の拠点とされる場合がほとんどなので、駅からのアクセスが重要になります。
弊社では大体5分前後を目安に、それ以上はシェアハウスを主として考えています。

 

工事過程

今回は工事が始まる前に、玄関~ダイニングの壁の漆喰塗り、柱の塗装のDIY会を行いました。

 

DIY会

古民家、リノベーションを身近に感じてもらうため、オーナー様や建物近隣の方、DIYが好きな方などに呼びかけ定期的にこのようなイベントを開催しており、今回も多くの方にご参加いただきました!
今後もSNS等で告知をしていきますので、ご興味のある方は是非チェックして参加してみてくださいね!

インスタorX(旧Twitter)にてココミンカで検索!

 

工事開始

壁と柱が整い、いよいよ工事開始です。
古民家は、仕切りがふすま1枚という造りが多く、間取りを変えたりリノベーションがしやすい利点があります。

ふすまを取り払うだけでも、かなりの解放感と間取りの可能性を感じさせてくれます。

 

間取り

法令上シェアハウスでは1部屋7㎡(約4.2畳)以上が必要となるので、その広さを確保するために間取りを考え、今回は5Kから6LDKへ変更しました。
間取りが入り組んでいるので工事が大変に思われるかもしれませんが、元の状態が良いこともありそこまで大変な箇所はありませんでした。

 

浴室

強いて大変だったところを挙げるとすれば、浴室でしょうか。
昭和中頃に普及したバランス窯の交換に加え、取り壊すと大工事になってしまう壁のタイルは上から壁を貼り、リフォームを施しました。

 

キッチン

1階と2階にあったキッチンは、1階のみを残し2階は解体して洗面カウンターに。
間取りが複雑なこともありシステムキッチンは導入できなかったので、キッチンも洗面カウンターも職人の造作となりました。

余談ですが、弊社に建築部門が新設され、この物件が初めて専属の職人が施工に携わる現場になりました!
意思疎通を深め、より良い仕事ができるよう今後も努めていく所存です!

 

コンセプト

コンセプトを決める際は、その物件の中で「残せるもの」をピックアップし、その上でメインとなるアイテムや場所、考え方を絞っていきます。
今回は元々の素材を生かす部分が多かったことから和を意識し、その上で時代や利用者のニーズにも馴染むように「和洋折衷」をコンセプトにすることを決めました。

 

1階個室

1階の個室は和室で統一。
少し趣向を凝らし、琉球畳をチョイスしました。
琉球畳は縁のない半畳サイズの正方形の畳で、和の印象を残しつつもモダンでスタイリッシュな印象を与え、古民家っぽさが残る天井や柱との調和もはかってくれています。
いぐさの匂いも良い味を出しています。

 

2階個室

一方2階の個室は、腰壁デザインの洋風な造りに。
洋風とはいえ、明治・大正の洋館を意識したレトロな雰囲気で、古民家との相性もバッチリです。

 

共有スペース

1階と2階をつなぐ階段や共有スペースも、和と洋それぞれに馴染むよう、こだわりのクロス・インテリアを選びました。

 

リビングダイニング

そして、今回のメインとなるリビングダイニング。

元々あった柱や桜の木をあしらった天井などで歴史を感じるとともに、シンプルで洗練されたインテリアによって、和と洋、そして新と旧を融合させたスペースです。
KURA「カフェ」と言うだけに、1人や少人数で、落ち着いた時間を過ごせるような空間づくりを意識しました。

 

キッチン

先ほども少し触れましたが、職人造作のキッチンは、高さや棚の配置など造作だから叶う使い勝手の良さ。
古民家の雰囲気を損なうことなく、木製で統一感を出しています。
カフェでのゆったりした時間を過ごしてもらうため、コーヒーメーカーも導入しました!

 

靴箱

造作つながりでは、今回は靴箱にも注力しています。
弊社の他の物件もそうですが、一般的なシェアハウスの靴箱はこの半分くらいの大きさではないかと思います。
しかし、季節やシーンごとに使い分ける靴は意外に場所を取るもの。
今回は玄関が広かったこともあり、1人分のスペースを多く取れる靴箱を造作で設置しました。
弊社のシェアハウスはほとんどが女性専用ですので、女性社員の意見も聞きながら、毎回新しい試みを続けています。

 

シェアハウス「KURAカフェ」

シェアハウスとはそもそもどういうものか。
初心に立ち返った時、「長い人生の一瞬を誰かと過ごす」「色々な人と話す」というシェアハウスの価値を再認識し、そしてそれを表す漢字「位」にたどり着きました。
人が集まり、ともに時間を過ごすという意味を持つ「位」は「くら」と読むことができ、プランニングでもお伝えした「蔵」と二重の意味を込めて「KURAカフェ」の名前は決まりました。

1人の時間、プライベートは守られながらも、休憩がてら、コーヒーを片手に入居者の皆さんが集まってくれるような家になったら良いなと考えています。

 

ココミンカの活動

古民家再生事業を広く知っていただくため、ココミンカでは一般の方や不動産オーナー様に向けて、DIY体験や内覧会、懇親会などのイベントを開催しています。
今回のKURAカフェでも、多くのみなさんにご参加をいただき、壁の漆喰塗り、柱の塗装を行いました。

なぜこのようなイベントを開催しているかというと、私たちが工事に入るとほぼ毎回のように、近隣の皆様から「何の工事をしているの?」との質問をいただくのですが、そこには”長年抱えてきた不安や悩みの種”といったネガティブな感情が込められていることが多いように感じるからです。

たしかに、放置された空き家による日照遮断、虫の発生、悪臭被害といったトラブルは年々増加しています。
しかし、本来は伝統や古き良きものを残し、再生する可能性を秘めた空き家。
ネガティブな面ばかりが先行してしまうのは、その実態がクリアになっていないからだと我々は感じています。

なので、実際に空き家にお招きして、再生の一部を見て・体験していただき、変わっていく様子を自分事として感じてもらう。
そうすることで、未知で不安の種だった空き家に、興味や価値を見出していただけるのではないか。
私たちが行うさまざまなイベントやDIY体験会にはそんな意味があります。
実際に一部始終を見ていただいた皆様からは「すごく綺麗になったわね」「リノベーションするとこんなに素敵になるのね」と温かなお言葉をいただいています。

古民家再生は、ただ建物を綺麗にするだけで終わりではありません。
再び地域に迎え入れていただく関係性づくり、そして利用者に安心して過ごしてもらえる環境・空間づくり。ココミンカではそこまでが「古民家再生」だと定義しています。

施設詳細情報

◆ シェアハウス「KURAカフェ 中野新橋」
◆ 全6戸 ※女性専用
◆ 東京メトロ丸の内線「中野新橋駅」徒歩10分
◆ 2024年1月OPEN