民泊をはじめる前に知っておきたい民泊許可申請とは? 許可申請の違いや流れ、申請にかかる費用について解説
民泊を開業するためには、許可申請を行う必要があります。しかし、民泊によって申請の種類や流れなどには違いがあるため、注意が必要です。今回は、民泊の許可申請の違いについて詳しく解説します。民泊の形態や民泊の許可・申請にかかる費用についても解説しますので、参考にしてみてください。
【まずは知っておきたい】民泊の形態
民泊には、大きく分けて3つの形態があります。
- 旅館業民泊(簡易宿所営業)
- 特別民泊
- 新法民泊
民泊の形態によって許可制度の内容や申請が異なるので、まずは民泊の形態について詳しく解説します。
旅館業民泊(簡易宿所営業)
民泊の形態の1つ目は、「旅館業民泊(簡易宿所営業)」です。旅館業民泊(簡易宿所営業)は、旅館業法(簡易宿所営業)に基づく民泊で、営業日数の制限なく営業することが可能です。
民泊の3つの形態の中で、もっとも自由度が高いのは利点ですが、施設の構造・設備の基準がもっとも厳しく、申請の難易度も高いのが特徴です。
また、旅館業民泊(簡易宿所営業)は、ホテルや旅館の分類となるため、住居専用地域では営業できません。
特別民泊
民泊の形態の2つ目は、「特区民泊」です。特区民泊は、国家戦略特区法に基づく民泊で、国家戦略特区に指定されているエリア中でも、特区民泊条例を制定している自治体のみで営業することができます。
特区民泊を開業するためには、都道府県知事への認定申請を受ける必要がありますが、消防設備に関する規定は緩和されているため、申請が通りやすいのが特徴です。
特区民泊の宿泊日数は、2泊3日以上という決まりがありますが、年間営業日数の制限はありません。
新法民泊
民泊の形態の3つ目は、「新法民泊」です。新法民泊は、2018年6月15日に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」に基づく民泊です。
オンライン上で届出を提出することで簡単に民泊をはじめられます。新法民泊の分類は、「住宅」となるため、住宅専用地域での運営が可能ですが、年間営業日数が180日以内に制限されているので、注意が必要です。
また、民泊の物件に管理者が不在の場合には、登録を受けた住宅宿泊管理業者に住宅管理業務を委託する必要があることを覚えておきましょう。
民泊許可申請の違い
民泊許可申請の違いについて表にまとめました。
民泊の種類 | 旅館業民泊
(簡易宿所営業) |
特区民泊 | 新法民泊 |
所管省庁 | 厚生労働省 | 内閣府
(厚生労働省) |
国土交通省
厚生労働省 観光庁 |
許認可 | 許可申請 | 認定申請 | 届出 |
住専地域での営業 | 不可 | 可能
(自治体によって制限している場合あり) |
可能
(条例により制限されている場合あり) |
実施可能エリア | 全国 | エリア指定あり | 全国 |
営業日数制限 | 制限なし | 2泊3日以上
(年間営業日数の上限なし) |
年間営業日数180日以内
(条例で期間の制限が可能) |
最低床面積 | 3.3㎡/人 | 原則25㎡以上/室 | 3.3㎡/人 |
宿泊者名簿の作成・保存義務 | あり | あり | あり |
玄関帳場の設置義務(構造基準) | なし | なし | なし |
衛生措置 | 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置 | 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置、使用の開始時に清潔な居室の提供 | 換気、除湿、清潔等の措置、定期的な清掃等 |
消防用設備等の設置 | あり | あり | あり
(家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要) |
非常用照明等の安全確保の措置義務 | あり | あり
(6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要) |
あり
(家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要) |
近隣住民とのトラブル防止措置 | 不要 | 必要 | 必要 |
不在時の管理業者への委託業務 | 規定なし | 規定なし | 規定あり |
旅館業民泊(簡易宿所営業)と特区民泊は、年間営業日数の制限はありません。ただし、特区民泊は2泊3日以上の滞在が必要となるので、注意が必要です。新法民泊に関しては、年間営業日数が180日以内という制限があることを覚えておきましょう。
【形態別】許可申請の流れ
許可申請の違いを把握できたら、許可申請の流れを確認しましょう。ここでは、「旅館業民泊」「特区民泊」「新法民泊」の3つの形態ごとに許可申請の流れを紹介します。
旅館業民泊の申請
旅館業民泊の申請は、以下の流れで行います。
- 事前調査
- 保健所・自治体に事前相談
- 旅館業許可申請
- 営業許可書の交付
1.事前調査
旅館業民泊をはじめるためには、まずは事前調査を行う必要があります。
- 用途地域の確認
- 条例確認
- 近隣の教育関係機関の調査
旅館業民泊は、ホテル・旅館の分類となるため、どのエリアでも開業できるわけではありません。旅館業民泊を開業できるのは、「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」の6つの用途地域です。
どんなに気に入った物件が合った場合でも、物件が住居専用地域にある場合には、旅館業民泊の営業をすることができないので注意が必要です。
また、自治体の条例によって、民泊の開業が制限されているエリアもありますので、事前に確認しておく必要があります。
さらに、民宿から110m以内に学校や児童施設などがある場合には、学校等照会という手続きを行わなければならないことも把握しておきましょう。
2.保健所・自治体に事前相談
事前調査が終わったら、保健所や役所で旅館業民泊の許可申請に関する事前相談を行います。事前相談には、物件の図面と周辺見取り図が必要です。旅館業民泊は、旅館業法はもちろん建築基準法・消防法にも適合していなければいけないことを覚えておきましょう。
3.旅館業許可申請
準備ができたら、いよいよ旅館業許可申請を行います。申請書とその他の必要書類を忘れずに準備しましょう。審査期間中には、実際に基準を満たしているかの確認のために、保健所の立ち入り検査が行われます。
4.営業許可書の交付
立ち入り検査などに問題がなければ、営業許可書が交付されます。許可申請から営業許可書の交付までの期間の目安は、30日程度とされています。
ただし、自治体やタイミングによっても、必要となる期間は異なるので、注意が必要です。
特別民泊の申請
特区民泊の申請は、以下の流れで行われます。
- 事前相談
- 近隣住民への周知
- 特区民泊の認定申請
- 書類審査、現地調査
- 特区民泊許可の認定書交付
1.事前相談
保健所や消防署、役所などに事前相談を行います。事前相談には、物件の図面を持参する必要があります。図面から必要な設備をそれぞれ提案してくれるので、それに従って設備の準備を行いましょう。設備を準備することで、特区民泊の認定申請に必要な「消防法令適合通知書」を発行してもらうことができます。
2.近隣住民への周知
特区民泊の認定申請を行う前に、民泊について近隣住民に周知を行います。基本的には、文章を作成してポストに投函すれば問題ありません。しかし、エリアによっては近隣住民に対しての説明会を開催しなくてはならないケースもあることを覚えておきましょう。
3.特別民泊の認定申請
近隣住民への周知が終わったら、特区民泊の認定申請を行います。特区民泊の認定申請の申請書とその他の必要書類を忘れずに準備しましょう。書類に不備がある場合、申請にかかる時間が伸びてしまうケースもあるので、注意が必要です。
4.書類審査、現地調査
特区民泊の認定申請の書類を提出したら、書類審査と現地調査が行われます。事前相談で提案された設備を準備すれば、問題なく調査を終えることが可能です。万が一、書類審査・現地調査で問題が発生した場合には、問題点を改善後に審査・調査を受ける必要があります。
5.特区民泊許可の認定書交付
書類審査・現地調査に問題がなければ、特区民泊許可の認定書交付が交付されます。許可申請から営業許可書の交付までの期間の目安は、数週間程度です。ただし、自治体やタイミングによっても、必要となる期間は異なることは覚えておきましょう。
新法民泊の申請
新法民泊の申請は、以下の流れで行われます。
- 事前確認
- 新法民泊の届出
- 立ち入り検査
- 営業許可証の発行
新法民泊は、申請が「届出」なので、行政の承認を得る必要がなく、民泊の3つの形態の中でもっとも手軽に申請できるメリットがあります。
申請は、手軽ではありますが、新法民泊では制約や義務などもあるので、注意が必要です。
1.事前確認
新法民泊を開業するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 設備要件
→キッチン・浴室・トイレ・洗面設備が必須 - 居住要件
→すぐに生活できる状態の住宅、現在人が住んでいる住宅
これらの設備要件と居住要件を満たさなければ、新法民泊を開業することはできません。また、届出を行う前には、民泊新法で運営できるか事前に確認する必要もあります。条例によっては、そのエリアでは、民泊を運営できない可能性もあることを覚えておきましょう。
さらに、民泊の物件が賃貸の場合は民泊での賃借・転借が可能か否か、マンションの場合はマンションの管理規約によって民泊が禁止されていないかの確認も必要です。
届出の前には、必ず消防庁から「消防法令適合通知書」を入手しておきましょう。
2.新法民泊の届出
事前確認が終わったら、届出と必要書類を準備し、新法民泊の届出を行います。書類に不備がある場合には、営業許可がでるまで余分に時間がかかってしまいますので、注意が必要です。
3.立ち入り検査
届出に不備がない場合には、立ち入り検査が行われます。立ち入り検査では、民泊の物件が要件を満たしているか、消防設備が準備されているのかを確認します。
4.営業許可証の発行
立ち入り検査にも問題ない場合には、新法民宿の営業許可証が発行されます。年間営業日数180日以内に治まる範囲で、民宿の営業を行いましょう。
マンションで民泊開業の許可は下りる?
マンションで民泊開業の許可を得ることは、不可能ではありません。しかし、実際には戸建て住宅よりも難易度が高くなってしまいます。マンションで民泊を開業するのが難しい主な理由は、「マンションの管理規約」「建物の用途変更」「消防設備」です。
マンションは共同住宅であり、マンションの住民が守らなければならないルールとして管理規約を定めています。そのため、その他の要件を満たしていた場合でも、マンションの管理規約に反していた場合には民泊の開業はできません。
マンション規約をクリアしている場合でも、民泊の形態によっても異なりますが、民泊の形態にあった建物の用途変更や消防設備を守らなければならないため、非常にハードルは高くなることを覚えておきましょう。
民泊の許可・申請にかかる費用
民泊の開業は、許可・申請を得る必要があり、そのための費用がかかります。民泊の許可・申請にかかる主な費用は、以下の3つです。
- 事前調査費用
- 行政書士など代行費用
- 工事・消防設備費用
ここでは、民泊の許可・申請にかかる費用について詳しくお話しします。
事前調査費用
民泊を開業する際には、許可申請や認定申請、届出といった行政手続きが必要です。行政手続きをするためには、まず民泊を開業できる環境なのか、行政手続きが可能な要件を満たしているのかの事前調査を行います。それぞれのエリアの条例の確認はもちろん、保健所・役所・消防署にも足を運ばなくてはいけません。
これらの事前調査費用を依頼する場合の費用相場は、10万円程度だと言われています。
事前調査を行った結果、民泊の開業が難しいと判断されるケースもありますが、事前調査費用は返金されないので、注意が必要です。
行政書士など代行費用
許可申請や認定申請、届出といった行政手続きは、行政書士などの専門家に代行してもらうことが可能です。自分で行政手続きを行うこともできますが、手続きは複雑で手間がかかり、不備がある場合には開業まで時間がかかってしまいます。
そのため、行政手続きは、行政書士などの専門家に依頼することが多いのですが、民泊の開業申請の手数料以外にも代行に関する報酬を支払う必要があります。民宿の形態によって、費用相場は異なりますが、20~40万円程度の費用がかかることを覚えておきましょう。
工事・消防設備費用
民宿を開業する際には、リノベーションなどの工事や消防設備を導入するための費用がかかります。リノベーション費用に関しては、どの程度こだわってリノベーションを行うのかによって、費用相場は大きく異なるため注意が必要です。
消防設備は、非常灯や火災報知器、消火器などを設置するための費用ですが、民宿を開業する物件がマンション・戸建て住宅によってかかる費用には差が出ます。
費用相場としては、「マンションタイプ:10〜300万円程度」「戸建て(~2階):30〜50万円程度」「戸建て(3階~):50~100万円程度」となります。
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民泊を開業するためには、民泊の形態にあった行政手続きを行う必要があります。しかし、民泊の営業許可を得るためには、手間と高額な費用がかかってしまうため、なかなか一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか?
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民泊の許可は形態によって異なる!それぞれの違いを理解しよう
民泊の許可申請は、民泊の形態によって異なります。旅館業民泊(簡易宿所営業)は「許可申請」、特区民泊は「認定申請」、新法民泊は「届出」となります。
それぞれ、適用される法律から、申請までの流れや必要書類まで違いがあるため、それぞれの特徴をしっかりと理解するのが大切です。
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