東京に築80年の古民家を蘇らせる! 古民家シェアハウス 「ナカノコミチ」

築80年大須賀邸を蘇らせる

中野区若宮にある大須賀邸は築80年の木造住宅。建築当初より住んでいた家族が退去した。建物調査を実施したところ、建物本体や設備の劣化は想定以上に激しく、再び住居として利用するには大規模なリノベーション工事が必要な状態であった。建築時期が戦前の木造住宅ともなると、建物のいたる箇所に歪みが発生し、既成のリフォーム建材などを使用することも一苦労。特に大工工事は熟練した技術が求められ、区分マンションや新築住宅を主とする大工には施工を断られてしまうことも少なくない。これが築古リノベーション業界の現状である。

大須賀邸のリノベーション工事では神奈川県三浦市で古民家再生事業を営む合同会社LETROにコンタクトを取り、古民家再生チームを三浦方面からはるばる東京に呼び、彼らに施工を依頼した。

 

「古民家は床・天井を開けてみないと分からない」

解体が始まるや否や、大引などの劣化が激しく、再利用が難しいことが分かり、大工工事は大幅に遅れた。リノベーションをするにあたって、重要なのは下地の状態だ。下地の交換や張替を伴う場合、思わぬコストアップが発生ことも珍しくない。これも事業者から古民家再生が嫌がられる理由の1つだ。今回の解体工事でも昔ながらの設備が解体時に顔を出した。まず天井を外すと出てきたのは昔ながらの碍子引き配線。当時はまだ電気の利用が一般的ではなかったため、配線に使われる導体や絶縁材料も限られていました。このため、碍子引きを応用して、配線に使う導体を通す作業が行われていたと言われています。碍子引きで電気配線する場合、まずは導体を通すための穴を開けたり、溝を切ったりして通路を作ります。その後、紐や針金を使って導体を通す作業を行います。この方法は、導体の太さや配線の複雑さに制限があるため、大規模な配線には不向きでしたが、小規模な配線には有効でした。しかし、現代では、電気の利用が一般的になり、より高性能な配線材料や専用の工具が開発されたため、碍子引きによる配線はその姿を見ることはなくなりました。

 

 

床のフローリングを剥がすと、下からは豆掘りごたつが出てきました。豆掘りごたつは、日本の古くからある暖房器具の一つです。その歴史は古く、奈良時代にはすでに存在していたとされています。当時は、掘りごたつの底に火をおこし、その上に鉄や陶器の釜を置いて料理をしたり、温泉地で足を温めるために使用されていたとされています。江戸時代になると、掘りごたつを室内に設置して暖をとるようになり、豆炭という燃料を使うようになりました。豆炭は、枝豆や大豆などを炭化したもので、煙や臭いが少なく、燃焼効率がよいため、掘りごたつの燃料として広く使用されました。現代においては、中央暖房の普及などにより、豆掘りごたつの使用は減少していますが、伝統的な日本の文化として、一部地域で今でも愛されています。

 

 

その他にも戦時中のアルバムや下宿として利用されていた書籍、この建物から発見されるさまざまな資料ががまさに歴史的な建物の証明している。

 

解体しないと状態が分からないことも多い。古民家リノベーションが業者に嫌がられる理由のひとつ

残すところと壊すところ見極めが非常に重要な要素だ。

 

「古民家らしさ」を生かす

古民家再生事業を営む合同会社LETROは住宅をただ新しくするのではなく、「古民家らしさ」を生かしたリノベーションを得意としている。LETROの特徴がつまった「猿山シェアロッヂ」は横須賀市にある。小山から海をのぞめる素晴らしいロケーションのシェアハウスなのだが、この建物、何と様々な現場の廃材をかき集め、その廃材でキッチンスペースが作られているのだ。古民家を生かすためにあえてリノベーションに古材を利用する徹底した「こだわり」。これが今回の大須賀邸にも生かされている。

 

 

横須賀市のシェアハウス「猿山シェアロッヂ」

元はボロボロの空き家だったものを大幅にリノベーションし、横須賀の観光名所である「猿島」を見下ろすことのできる立地にちなんでこの名前を付けました。山小屋風の外観にオーシャンビューの大きなウッドデッキ。隣家よりも高い位置にあるため360度の景色が楽しめます。ヴィンテージ家具と照明で飾られた大きなリビングには蒔きストーブや120型スクリーンのプロジェクターがあり、映画やスポーツを楽しむことができます。デッキとキッチンの間はカウンターになっており、夜はバーのような雰囲気に。横須賀の夜景と遠くに見える横浜の夜景を見ながら仲間と語りあうことができます。

古民家シェアハウスのこだわり

露出された天井は当時の建材を魅せる演出。建物の歴史を感じさせるためにそのままにした階段や梁。当時の建材は現在とは違い、直線的に加工されておらず、それぞれに異なる曲線美を持つ。建材1つ1つが唯一無二の味わいを見せてくれる。老朽化して開かなくなっていた玄関扉は新品に交換するのではなく、別現場から古い扉を持ち込んだ。当然のことながらそのままではサイズが合うわけはない、これがまさに熟練された古民家職人という技術である。