最大の難点が最大の魅力に! 遊び心満載の誰もが楽しめる民泊「Tokyo Ninja 屋敷」
今回紹介するのは昨年オープンした「Tokyo Ninja 屋敷」という、その名の通り「忍者」や「からくり屋敷」をモチーフにした民泊施設。
最大の不安材料であった「迷路のような間取り」を全面的に活かし、施設のコンセプトに昇華させた事例です。
依頼の流れ・現地調査
今回は、以前の持ち主から土地・建物すべてを買い取った不動産業者様からのご依頼でした。
すでに取り壊し時期が決まっている「定期借家」として賃貸に出されていた物件で、そういった契約期限や築年数、間取り等でなかなか借り手が見つからないとのご相談を受けました。
間取り
建物は、木造2階建て、築65年、間取りは6DKの古民家です。
不動産業者様を挟んでいるので、以前はどのような方が住んでいたか、空き家の期間はどのくらいかといった詳細は不明です。
迷路のような導線
現地にお邪魔してまず感じたのは「迷路みたい」ということ。
それは「振り分け」という各部屋への独立した動線の確保がされておらず、ふすまや扉でつながっている別の部屋がそれぞれ動線になっている間取りが大きな要因と考えられます。
また、間取り図では廊下に見える部分も、実は屈まないと通れない隠し通路のようになっていたり、かなり特殊な設計がされている建物でした。
そして階段。
間取り図を見ていただくと、ダイニングに階段が2つあることがわかるかと思います。これも迷路のような造りを印象づけています。
その他「定期借家」で建物の使用期限が決まっていること、そして最寄駅から距離があること等、運用面での懸念材料も多い物件でした。
弊社では、物件のオーナー様から今回のような不動産業者様はじめ企業・団体様まで、土地建物のことでしたら幅広く対応しておりますので、相続・活用でお悩みの方は是非一度ご相談くださいませ。
コンセプト
目下の課題は、この特殊な造りをどう使うか、どう見せるか、でした。
しかし、不動産業者としては頭を悩ませる要素ですが、一個人としてはワクワクする気持ちもあります。
同じように、暮らすことを考えるとマイナスに感じる部分も、遊びに来るなら絶対に楽しいはず。
そこで今回は、これまでの主であったシェアハウスではなく民泊として活用することを決め、またテーマパークのような場所を作れないかと考えました。
そして、古民家の内装、迷路のような間取り、それらを活かすテーマパークは「忍者」ではないか?
実はすでに、現地調査の最中にはその構想まで出来上がっていました。
古民家リノベーションでシェアハウス運用をしていた弊社ですが、こちらの物件に携わったのは民泊への参入を始めたばかりのころ。
物件の仕様としても、打ち出したコンセプトとしても、かなりの挑戦であったことは間違いありません。
工事過程
建物は古くなっても、当時の職人たちが手掛けた伝統的な家屋や繊細なデザインの価値は変わらず、むしろ長い年月をかけたからこそ出てくる味や趣があります。
そして、オーナー様が大切に使ってきた証や歴史のバトンも繋いでいきたいという思いから、弊社は「残せるものは残す」をモットーに古民家再生を行っています。
しかし、今回は特にそれが顕著です。
暮らしやすさ・利用しやすさを考え、壁や柱を取り除く間取りの変更は否めない古民家再生ですが、使いづらい間取りすら今回は価値になります。
いつもとは違い、今回は修繕やコンセプトに合わせた仕掛けづくりといった細かな工事がメインとなりました。
DIY会
施設オープンの約半年前、DIY会から工事はスタート。壁の漆喰塗りとオイルステイン塗りを行いました。
一部屋、一面だけでも大変な漆喰塗りですが、多くの方にご参加いただき〈攪拌機の大きさも用意した漆喰の量もかなりのものでした〉、とても素早くきれいに仕上げることができました。
浴室
浴室はタイル張りからモルタルに。
シャワールームだけという施設も多い中、ご家族連れのお客様を見越し、浴槽と広い洗い場は残しました。
仕掛け
今回のメイン工事、仕掛けづくりが始まります。
抜け穴、どんでん返し、アイデアは浮かびますしイメージも共有できるけれど、どのように形にしたら良いかわからない。
特殊な依頼なので造り慣れている職人さんもおらず、皆で試行錯誤を繰り返しました。
内装
修繕や仕掛けづくりが終わると、内装・インテリアの仕上げにかかります。
ダイニング
広い空間、大きなテーブルで、大人数の宿泊でもみんな一緒の時間を楽しむことができます。
特に外国からのお客様は、親戚同士や複数グループでの来日も多く、ホテルやairbnbでは対応できない需要に応えることができます。
的当てやボールプールなどお子様が楽しめるスペースや、大人も楽しい漫画コーナーも充実。
忍者服や手裏剣、刀で忍者ごっこもできるようになっています!
寝室
畳や木製サッシ等、どの部屋も和の雰囲気を残したモダンなベッドルーム。最大10人まで泊まることができます。
照明
暗くなりがちな古民家は、照明のこだわりがいがあります。日当たりが良いので日中はほのぼのした印象ですが、夜はスタイリッシュでしっとりした雰囲気に。
残る古民家らしさ
随所に残る古民家らしさが、かわいらしさを演出してくれています。古民家に多い急な階段・木製の柵も、若い方や外国の方には珍しいようで、写真スポットにもなっています。
お客様の声
構想通りの内装が出来上がったものの、果たしてこのようなマニアックな施設がお客様に受け入れてもらえるのかと正直不安もありました。
しかしオープンから1年弱、予想以上の反響をいただいており、まずはひと安心です。
「観光地をまわる以外でも、宿泊でも日本を感じることができた」「NARUTO(漫画・アニメ)の世界に憧れていたのでワクワクした」「面白いユニークな仕掛け、ゲームやおもちゃもいっぱいあって、子供たちも楽しめた」等々
コンセプトや土地柄、外国からのお客様が多く、日本滞在の長期間にわたってご利用くださる場面でも、飽きずに楽しんでいただけたことが窺え、弊社としてもうれしい限りです。
リスクも大きく挑戦的な事例ではありましたが、空き家となっていた建物が生まれ変わり再び日の目を見るようになるのは、何よりも仕事冥利に尽きる瞬間です。
古民家の活用・運用にお悩みのオーナー様へ、今後も様々なバリエーションをもってご提案をしていけるよう、改めて気合が入った事例でした。
ココミンカの活動
古民家再生事業を広く知っていただくため、ココミンカでは一般の方や不動産オーナー様に向けて、不動産セミナーや内覧会、懇親会などのイベントを開催しています。
今回の漆喰塗りやオイルステイン塗りも、このイベントを通じてご協力いただいております!
なぜこのようなイベントを開催しているかというと、私たちが工事に入るとほぼ毎回のように、近隣の皆様から「何の工事をしているの?」との質問をいただくのですが、そこには”長年抱えてきた不安や悩みの種”といったネガティブな感情が込められていることが多いように感じるからです。
たしかに、放置された空き家による日照遮断、虫の発生、悪臭被害といったトラブルは年々増加しています。
しかし、本来は伝統や古き良きものを残し、再生する可能性を秘めた空き家。
ネガティブな面ばかりが先行してしまうのは、その実態がクリアになっていないからだと我々は感じています。
なので、実際に空き家にお招きして、再生の一部を見て・体験していただき、変わっていく様子を自分事として感じてもらう。
そうすることで、未知で不安の種だった空き家に、興味や価値を見出していただけるのではないか。
私たちが行うさまざまなイベントやDIY体験会にはそんな意味があります。
実際に一部始終を見ていただいた皆様からは「すごく綺麗になったわね」「リノベーションするとこんなに素敵になるのね」と温かなお言葉をいただいています。
古民家再生は、ただ建物を綺麗にするだけで終わりではありません。
再び地域に迎え入れていただく関係性づくり、そして利用者に安心して過ごしてもらえる環境・空間づくり。ココミンカではそこまでが「古民家再生」だと定義しています。
◆ 民泊「Tokyo Ninja 屋敷」
◆ 西武池袋線「東長崎駅」徒歩8分
◆ 築65年/木造2階建て/6DK
◆ 2023年OPEN