空き家が古民家再生でよみがえる 古民家シェアハウス「仲な家 -naka naka-」

昔は10人兄弟が住んでいた立派な戸建ては時代の流れとともに住む人がいなくなり、しだいに建物は劣化し、雨漏りや損傷がひどく、やがて倉庫としてしか利用ができなくなってしまった。ココミンガが現地を調査した時には、すでに建物はまりものようにツタで覆われてしまっていた。庭も荒れ果ててジャングルのような状態。蚊も大量に発生していた。

 

現地調査

空き家は数年かけて少しずつ劣化することもあれば、1年程度で劣化してしまうケースもある。古民家シェアハウス「仲な家 -naka naka-」も数年間倉庫として、さまざまな業者に利用されていたが窓ガラスの割れや雨漏りなどはずっと放置されてしまい、建築当時は豪華であったはずの建物の内装もすこしずつ劣化していってしまったようであった。

長年放置されてしまった雨漏りで腐ってしまった畳

 

ジャングルとなってしまった中庭

数年住宅として利用されていなかったために、水道設備や電気設備もほとんど利用できなくなっており、ココミンカのリノベーション担当スタッフも「これは高額なリノベーション費用がかかってくる」とすぐに感じたが、各部屋さまざまに装飾された天井や石張りのお風呂など、昭和レトロな雰囲気をどうにか生かせないかとすぐにオーナー向けの提案資料を作成。女性専用の古民家シェアハウスにリノベーションしたいとオーナーや管理会社に提案した。古い住宅の良さを生かす「古民家再生」というワードに興味を持っていただいたようでとんとん拍子に話は進み、すぐに熟練のリノベーションチームに現場入りしてもらった。

古民家再生は目利きが大事

一般的に古い住宅はその当時の社会情勢などを背景にして、年代によってその間取りに特徴がある。「仲な家 -naka naka-」では10人以上のご家族が住んでいたこともあって、家族が増えるたびに和室を小間切れしたであろう改装がなされ、最終的にはおよそ150㎡の延床面積の建物が9LDKという、現在ではなかなかお目にかかることができない間取りになっていた。

古民家再生のスタートとして、まず難しい作業になるのが解体作業

通常のリノベーション工事では、建物の劣化が激しい場合、一度内装はすべて解体しスケルトン(建物の基本構造である柱・壁・床などを残した状態)にしてから、そのほとんどを新しい建材、設備に作り変える工事を行うのが一般的だ。内装解体工事などの過酷な労働環境では働く日本人労働者は非常に少なく、実際に日本の解体現場で働いている現場の労働者は若い外国籍の労働者がほとんどなのだが、コミュニケーションが難しい外国籍労働者でもスケルトンにする解体工事であれば、難しい指示も壁や床への養生もすることなく解体工事を進めることができる。しかしながら、古民家再生ではそうはいかない。

 

古民家再生は可能な限り利用できる古材を活かす。古材の良さというのは長い年月をかけてはじめて現れる建材の味である。これはどんな精巧に作られた現在の古材風の建材でも表現することが難しい。古民家再生の解体工事では、「まだ使用可能な建材の見極め」という目利きが必要になるため、内装解体業者による解体は細部での指示が必要になるし、大工にも解体工事をお願いするケースもあるほどである。(私もはじめて古民家再生を実施した際には、解体工事に参加して、一日中天井材を落とし、大量のネズミの糞を頭にかぶったことがある。)

「仲な家 -naka naka-」では間取り変更のために不要になる壁や造作物のみを解体し、通常のリノベーション工事では壊してしまうであろう、天井材や木製サッシ、フローリングなどは今もそのままに利用している。

 

古民家リノベーション

解体工事を経て、活かすもの、直すもの、新しくするものをここで改めて決定しなおす。解体するタイミングではじめて、建材で隠れていた建物構造や住宅設備が顔を出すことがあり、実はこの時点で正式な見積もりが作成させる。ココミンカでは数多く再生現場を手掛けているので、見積り、家賃査定が事前に実施できるが、やったことのないリフォーム業者ではほとんど対応できないであろう。想定に比べて建材が劣化していたり、設備のルートが想定と違っていたり、新しい発見は建物ごとさまざまだ。「仲な家 -naka naka-」では活かすもの、直すもの、新しくするものを以下のように決定した。

 

活かすもの

各部屋に装飾された天井

1F廊下、縁側、階段の床材

石張りのお風呂

木製の造作物

 

活かすもの

木製サッシ

木枠

 

新しくするもの

水回り設備(キッチン、洗面台、トイレ、シャワールーム)

水回り床材(タイル仕上げ)

電気設備

各居室の床材(無垢フローリング)

居室の建具ドア、木製造作物、和風ロールスクリーン

外構部(住宅ポスト、館銘板など)

壁仕上げ(漆喰塗り)

 

古民家再生を行うにあたって最も重要な部分は、新しい建材と古材との調和

例えば、日に焼けた古いドアがあったとして、そのとなりにダイノックシート施工された木製ドアがあったらどうだろうか?おそらく、ダイノックシート施工された木製ドアは清潔感を感じ、日に焼けた古いドアは不潔な感覚を私たちに与えてしまうだろう。日に焼けた古いドアがどんなに高級な建材であったとしても関係ない。私たちは見慣れている新しい建材を清潔と感じ、見慣れない古いドアは不潔と感じてしまう。しかし、この古いドアを歴史のある旅館で見たとしたらどうであろう?不思議なことにこの古いドアを歴史ある格式高い清潔なものであると認識してしまうであろう。逆にこの歴史ある旅館にダイノックシート施工された木製ドアあったとしたら、「なんてチープなデザインなのだ」と、きっと感じてしまうだろう。どちらも良いドアに違いないのであるが、デザイン全体として浮いてしまうものがあると人はそれを異物ととらえ、嫌悪感をいだいてしまう。

新しい建材や修復する建材をいかに「新しく見せない」か。これが古民家再生の最も難しく、職人の腕が問われる部分である。

 

水回り周辺ではなるべく色を使用せず、古材の味が出るように

 

エイジング加工をされ、古材に調和された室札

 

多くの木々を伐採し、砂利引きされた庭

熟練工のよる工事が行われても、不具合発生することがあるのが古民家再生だ。特に雨漏りなどの補修に関しては、台風などの強い風雨が起こらないと発覚しないこともあり、仕上げが終わった後に戻り作業が発生してしまうこともよくあることだ。そんな手間がかかる古民家だからこそ、出せる味わいがあるのだが、施工するリフォーム業者は見積りも出すのも一苦労で、相場から明らかにかけ離れたお断りのお見積もりを頂戴することもよくあることだ。東京都内でも古民家再生を行える大工や職人は非常に貴重な人材だ。ココミンカでも初めて古民家再生を行ったときには熟知した横須賀の古民家再生チームにそのまま東京に来てもらい、施工をすることもあった。

古民家シェアハウス 「仲な家 -naka naka-」

古民家の住所である豊玉中から「中」の字を取って、そこに人が集まるという意味で【仲】としました。居住者の皆様が仲良く過ごしていただける古民家シェアハウス、ワークショップでさまざまな方にご協力で完成した、そんな願い、想いを込めた古民家シェアハウス「仲な家 -naka naka-」

間取りは通常のシェアハウスに比べて、やや広めの6畳を基本とし、最大定員を7人までとした。1Fにはリビングダイニングスペース、サニタリースペースを設置し、すべての共有スペース1Fに配置し、共用スペースと専用スペースの階を分けることによって、他の居住者の生活音を感じない作りとしている。1Fの造作キッチンはタイルと防水モルタルで仕上げ、素朴な色味の古材と調和するような深いグリーン。備え付けの家具家電はシックな空間を壊さぬように、すべて黒やシルバーで統一している。

 

リビングスペースでは複数の居住者がテレワークを行えるように各所にテーブル、デスク、電源を設置。家具は古民家の雰囲気に合わせた古家具を使用して、昭和レトロな雰囲気を楽しみながらシェアハウス内でゆったりとした時間が過ごせる。およそ30坪ある専用の中庭からは朝になると優しい日差しが差しこみ、夜は木々がライトアップされ、まるで旅館のような風景は、とても東京都23区とは思えない癒しを感じることができる。

各居室には広めのクロークスペース、ベッド、冷蔵庫が配置され、客室名が刻まれた木製プレートとライトグレーの漆喰で仕上げられた廊下は昭和レトロな雰囲気をより演出している。エジソンランプやステンドグラスの電球色の照明は、漆喰の凹凸を照らし落ち着いた陰影をつける。サニタリースペースでは、全自動洗濯機やレトロなデザインの洗面台。建築当時より活かされた石張りのお風呂は心も体も温たためてくれる。

日本では古い建物を壊し、新しく建てるというのが一般的だ。特に発展が著しい東京都内においては、その姿をなかなかお目にかかることもないだろうし、そこに住めるというだけで貴重な体験である。熟練工たちが手掛けた伝統的な家屋や繊細なデザイン、その貴重な作品は時がたってもその評価は決して変わるものではない。ココミンカではそんな職人の想いを引き継ぎながら、古民家再生を行っている。

3Dスキャンカメラの映像で実際に「古民家シェアハウス 仲な家 -naka naka-」をオンライン上で内見することができるので、お時間があればこちらも見ていただきたい。

ココミンカの活動

古民家再生を行うにあたって、ココミンカでは一般の方や不動産オーナーに向けて、古民家再生事業を広く知っていただくためにDIY体験や内覧会、懇親会などのイベントを開催している。長年放置されてしまった空き家は近隣の方にとって、決してポジティブなものではない。日照が遮られたり、虫が発生してしまったり、獣害による悪臭がでることもある。

 

私たちが現場に入ると、ご近所の皆様から「何になるの?」とほぼすべての現場でさまざまなお声がけをいただく。その中には近隣の方の苦労や不安などをいただくことも少なくなく、頭ごなしにお叱りをいただくこともあるくらいだ。空き家は近隣にとっては不安の種なのだ。そんな不安の種だった空き家にだんだんと人が集まってくる。はじめはただの工事の関係者、しだいに一般人にしか見えない人々、若い人たちもいる。しかも何十人も。実際に「仲な家 -naka naka-」では合計70人超の方々に来ていただいた。

 

「一体この建物に何が起こっているのだろうか?」

 

近隣の方々はそう感じたに違いない。そして次第にネガティブな感情がその建物への「興味」へと変わってくる。実際に一部始終を見ていただいたご近所様には「すごく綺麗になったわね」「リノベーションするとこんなに素敵になるのね」と不安が一変、温かなお言葉をかけていただける。人は人が集まる場所に興味を抱き、理解しようとする。私たちが行うさまざまなイベントやDIY体験会にはそんな意味がある。

 

DIY体験では自宅でも簡単に挑戦できるような、オイルステイン塗装によるエイジング加工や漆喰塗りなどを実施している。自分自身で古民家再生をやってみたい方、古民家が大好きな方、建築や不動産関係でお仕事をされている方、性別、年齢さまざまな方にお越しいただいた。DIY体験ではココミンカのスタッフもお客様と混じって楽しく作業をさせてもらった。DIY休憩中に中庭にて参加者全員で食べた昼食はまさに空き家に人が集まった瞬間だ。

 

「仲な家 -naka naka-」のDIYイベントの記事はこちらから

 古民家シェアハウス_タイル貼りレポート 

 古民家シェアハウス_漆喰塗りレポート 

 古民家シェアハウス_オイルステイン塗装レポート 

 

 

古民家再生はただ建物を綺麗にするだけで終わりではない。リノベーション工事が終わった後、その建物に住んでいただく方に安心していただけるように、長年地域交流から外されてしまった空き家を再度、地域の一員として近隣の皆様に迎えていただく。ココミンカではそこまでが「古民家再生」だと定義している。建物は所詮ただの物でしかない、それはいくら綺麗にリノベーションしても変わらない事実だ。そこに暮らす人々がいて初めてその住宅はよみがえるのだと私たちは願っている。

 

シェアハウス詳細情報

◆ 古民家シェアハウス 「仲な家 -naka naka-」 ※女性専用

◆ 西武新宿線 練馬駅 徒歩11分

◆ 2022年3月OPEN

 最新の空き情報はこちらから

 

「仲な家 -naka naka-」メディア掲載情報

2023年5月 賃貸住宅新聞様に取材されました。

2022年9月 SPA 様に取材・掲載されました。

2022年5月 東京R不動産 様に取材・掲載されました。

2022年5月 ひつじ不動産 様に取材・掲載されました。

2022年5月 TOKYO SHARE HOUSE 様に取材・掲載されました。

2022年5月 シェアシェア(バンケッツ) 様に取材・掲載されました。