空き家特例とは? 適用要件や法改正、必要書類、チェックシートについても
空き家特例とはどのようなものなのか、詳しく把握している方は少ないかもしれません。空き家を売却する場合、空き家特例を活用することで税金の負担を軽減できる可能性があります。今回は、意外と知られていない空き家特例の詳細や適用条件、必要書類などについて分かりやすく解説していきます。
空き家特例(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)とは?
一般的に空き家特例といわれているのは、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」のことであり、空き家の売却時に課税される税金の負担を軽減するために設けられている制度です。
特例の具体的な内容としては、所得税の計算において、空き家を売却した際の利益(いわゆる譲渡所得)から、最大で3,000万円を控除することができるというものです。これにより、空き家を売却すると負担しなければならない所得税の額を大幅に減らすことができます。仮に、空き家の売却によって得た利益が3,000万円に満たなかった場合は、特例を利用できれば所得税はかかりません。
このように、空き家を売却する人にとって非常に大きな節税効果をもたらしてくれるのが空き家特例の特徴といえるので、これから空き家を売却する予定がある人は必ず覚えておきましょう。
平成31年度の税制改正による空き家特例の見直し
平成31年度、税制改正による空き家特例の見直しが行われました。改正の主な内容としては、空き家特例の対象の拡充です。改正前の特例では、被相続人居住用家屋のみが対象とされていてたため、空き家が相続される直前まで被相続人が住んでいたという事実が必要条件でした。つまり、相続される前に被相続人が老人ホームなどの施設に入っていた場合は、空き家特例の利用ができなかったということです。
しかし、このルールによって空き家特例を利用できなくなってしまうケースが多かったことから、被相続人が老人ホームなどの施設に入ってから空き家が相続された場合も、特例の対象として認めることになりました。特例の対象の範囲を広げることで、空き家を放置しないよう売却などの処分を促すことを狙いとした改正といえるでしょう。
空き家特例の適用要件
空き家特例を利用するためには、下記の適用要件をすべて満たしている必要があります。
- 建物と土地をセットで相続していること
- 2023年12月31日までに売却すること
- 被相続人が相続直前まで一人暮らしをしていたこと
- 建物が1981年5月より前に建築されていること
- 相続時から売却時まで空き家の状態が続いていたこと
- 建物は耐震リフォームもしくは解体した状態で売却すること
- 売却する相手が特別関係者ではないこと
- 売却価格が1億円以下であること
- すでに同じ人物からの相続で空き家特例を利用していないこと
- 空き家が区分所有建物ではないこと
ここでは、それぞれの適用要件について詳しく解説していきます。空き家特例の利用を検討している人は、1つずつ確認していきましょう。
建物と土地をセットで相続していること
空き家特例を利用するには、建物と土地をセットで相続していなければなりません。例えば、空き家の建物部分と敷地部分とを別々の人が相続している場合は、空き家特例を受けられなくなってしまいます。空き家特例の利用を考えている場合は、建物と土地をセットで相続することがポイントとなるので、覚えておきましょう。
2023年12月31日までに売却すること
2023年12月31日までに売却しなければ、空き家特例は受けられません。空き家特例のもともとの要件では、相続してから3年後の年末までに売却することが必須とされていました。しかし、空き家特例の制度には期限が定められているため、売却は2023年末までに行う必要があります。つまり、これから空き家を相続する場合は、期限が迫っているため、速やかに売却することが必要となるでしょう。
被相続人が相続直前まで一人暮らしをしていたこと
空き家特例が適用されるのは、被相続人が相続の直前まで1人暮らしをしていた場合に限られます。実際に1人暮らしをしていたかどうかを示すためには、被相続人居住用家屋等確認書と呼ばれる書類の用意が必要です。なお、平成31年度の税制改正により、相続直前に老人ホームなどの施設に入っていた場合も適用が認められるようになっています。
建物が1981年5月より前に建築されていること
空き家特例の対象となる建物は、1981年5月より前に建築されている必要があります。1981年5月は、建築基準法の改正が行われた時期で、建物に関する耐震基準が大きく変更されました。つまり、改正前の耐震基準をもとに建築された建物を空き家特例の対象とすることで、耐震性が不十分である空き家が増えないようにすることを目的としているのが分かります。
相続時から売却時まで空き家の状態が続いていたこと
相続してから売却するまでの間、誰にも使用されずに空き家の状態が続いていたことも、空き家特例の適用要件となっています。例えば、相続したあとに自分がそこに住んでいた期間や、他人に賃貸した期間が少しでもある場合は、空き家特例を利用することはできません。この適用要件を知らずに、売却前に空き家を使用してしまうと、特例を利用できずに後悔する可能性があるので、注意しましょう。
建物は耐震リフォームもしくは解体した状態で売却すること
空き家特例を利用する場合は、売却前に建物の耐震リフォームをしておくか、解体して更地の状態にしておかなければなりません。空き家特例は、古い耐震基準によって建てられた空き家の増加を抑えることを狙いとしているため、耐震性が不十分な空き家を何も手を加えずに売却するのは本来の目的に沿いません。なお、耐震リフォーム工事や解体工事には費用がかかるため、費用負担も考慮しながら空き家特例の利用を検討することが重要です。
売却する相手が特別関係者ではないこと
空き家特例では、売却する相手が特別関係者ではないということも、適用要件として定められています。特別関係者とは、親や子、配偶者などの親族にあたる人物や、親族の経営する会社などのことをいいます。例えば、空き家を相続し、配偶者へ売却しようとしても、空き家特例を利用することはできないので注意しましょう。空き家特例を利用するなら、親密な関係にある相手ではなく、完全な第三者へ売却する必要があります。
売却価格が1億円以下であること
空き家の売却価格が1億円を超える場合は、空き家特例の対象外となってしまうので、注意が必要です。空き家特例では、売却価格が1億円以下であることが適用要件とされています。なお、複数の相続人で共有している空き家を売却する場合は、すべての売却価格を合算して判断されるため、正しく理解しておきましょう。
すでに同じ人物からの相続で空き家特例を利用していないこと
空き家特例は、すでに同じ人物からの相続で空き家特例を利用したことがある場合、適用されません。例えば、被相続人から複数の不動産を相続し、そのうち1つの空き家を売却して空き家特例を利用したら、次に別の空き家を売却したとしても空き家特例は再度利用できないことになります。そのため、相続する空き家が1つでない場合は、空き家特例を利用できるのは一度だけであると把握しておくことが大切です。
空き家が区分所有建物ではないこと
空き家特例は、マンションなどの区分所有建物は対象外となっています。そのため、相続によって誰も居住していない状態にあるマンションの一室を取得し、売却する場合であっても、空き家特例を利用することはできません。また、戸建て住宅のように見えても、区分所有登記がなされている二世帯住宅は、同じく適用対象外となるので注意しましょう。
空き家特例のチェックシートとは
空き家特例を利用する場合は、確認しなければならない項目が非常に多くあります。そのため、不備なく申請するためには、国税庁の発信しているチェックシートを使って必要な項目を事前に確認しておくことが重要です。チェックシートは、誰でも簡単に空き家特例の対象か否かを確認できるよう、非常に分かりやすくまとめられています。空き家を売却する際は、まずチェックシートを確認することから始めるとよいでしょう。
空き家特例の申請に必要な書類
空き家特例を利用するには、必要な申請手続きを行う必要があります。そのため、申請に必要な書類を把握しておくことは非常に重要です。主な必要書類は、下記の通りです。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 空き家の登記事項証明書
- 空き家の売買契約書の写し
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 空き家の耐震基準適合証明書もしくは建設住宅性能評価書の写し
なお、以上の必要書類は、確定申告書とあわせて提出することとなっているので、余裕を持って書類の準備を進めましょう。空き家特例の申請に必要な書類の詳細も、チェックシート下部に記載がありますので、きちんと目を通しておきましょう。
空き家を所有している人は空き家特例への理解を深めておこう
空き家を売却する際、空き家特例を利用できれば、大幅に税金の負担を軽減することが可能です。ただし、空き家特例は誰でも利用できるものではなく、多くの適用要件をすべてクリアする必要があります。そのため、まずは空き家特例のチェックシートを参考にしながら、自分が適用要件をクリアしているのかどうかを確認しましょう。
また、適用要件に当てはまらなかった場合でも、空き家を放置するのはよくありません。空き家を売却しなくても、「フリーノベーション」によって空き家を所有したまま有効活用する方法などもあります。フリーノベーションはオーナー様の負担ゼロ円で賃貸経営が始められるサービスです。売却以外の1つの選択肢として検討してみましょう!